となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > 『日記』

2016年06月20日

秋に向けて仕込み中。となみブルー御召

まだまだホントの仕込みですが、新しい色を試しています。
と言っても、横に通す糸を通すだけで色が変わりますし、今まで使っていない色を使えば、新色の反物が上がってきます。横糸を変える自体は、そこまでの手間ではありません。となると、新しい色を試す、ということはそんなに大したことが無い。と思われそうです。

が、今回の『新しい色を試す』というのは、経糸を変更しての新色作りです。経糸というのは織物を一本織る度に変えるのではなくて、場合によっては何十本モノ織物を一つの経糸、一種類のモノで織り上げます。

そのため、失敗すると、何十本織れるはずの経糸が全て無駄になってしまい、最悪の場合は最後まで織り切らず、途中で切断となります。そのため、今まで安定的に織れていたモノから経糸変更することは、そこそこ大きなチャレンジです。(だから、少なからず『問題ないのに、なんで?』そんな声も聞かれます)

今回の目的は、単純に『新しい色を作る』ことにもありますが、その色は『となみブルー』を表現したいと考えています。となみブルーで織る御召つくりです。今のところは試織で柄も試験です。

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(となみブルーの御召)

まだ完成していませんが、もちろん経糸を変えず、緯糸(横糸)だけでも、これに近い色をつくることもしてみました。ただ、その時は経糸の色が邪魔をして、濁ってしまう。悪くない色でもあったのですが、まだ途中段階のこのブルーの方が遥かに透明感があり、となみブルーに近い色をしています。

この目出しサイズで見ていると、よく見えても、これが『反物になると、どうなのか?』。そこから修正が必要か・・・、などなど、まだ完成までは遠いですが、秋に向けてこのモノづくりは視界良好です。楽しみにしていていください。

2016年06月14日

撮影会

用途色々で着物の撮影を行いました(自分も含む。笑 それはまた別の話で・・・)。
少し前から撮影の日を決めていて、その基準としては、梅雨に入ってもまだ本格的なじゃないはず(笑)の頃。そんな感じでしたので、前の日から当日の午前中は雨が降っても、昼からは止んで、空気も澄んでちょうどいい頃合い。という狙い通りの撮影日でした。

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私は、撮られる方の役回りもありましたので、着物を着たまま、撮ることもし、バタバタながらも、この時期にあったいい写真が撮れたと思います。

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『上品綟/袋帯、総紗縫/日傘』


メーカーとしては、帯、着物単体を出来上がった際に、見ることが一番多いです。そのため、帯・着物・小物等々、その方の意思でコーディネートされた姿を見るのは、その機会が増えたと言っても未だに幸せです。特に、カメラだと通りすがりパッと見るわけでも無く、ファインダー越しに一つ一つ真剣に凝視することができるので、またいつもとも違った感覚で、自分たちのモノづくりを確かめることができて、本当に良かったです。

たまにはこういう時間を作るのも、モノづくりには大事ですね。

2016年06月13日

こだわりを浴びてきました。

先日は電車に片道5時間少々揺られて、モノづくりの打ち合わせへ行ってきました。
次の午前早めに打ち合わせがあったので、(泊まりたかったけど)日帰り。

5時間✕2は少々堪えます。年?(苦笑)

今回お邪魔したお店とのお付き合いが始まって、まだ数年。と比較的短いのですが、ここのモノづくりへのコダワリと姿勢は半端無く、うちのモノづくりへの共感も含めて、今後も一緒にモノづくりしていきたい、と感じさせられる、数少ないメーカーです。今回のモノづくりも、となみ色が全面に入りますので、0から摺り合わせを繰り返し繰り返しして、進めていくことになります。

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ちなみに、今回は【伊藤若冲の世界】と【神坂雪佳の世界】の着物作り。
若冲の場合、今年の生誕300年には間に合わない可能性も高いのですが、こことのモノづくりの性質上仕方がない(苦笑)、と割り切っています。

本来、帯屋である、となみ織物が着物を作るようになったのは、自社帯が活きる着物を作るため、でした。それが最近は、着物でも、となみらしいコダワリを作り出す。そこに強く意識が無くようになってきましたので、おそらく今後もこことのモノづくりは強くなっていくと思います。

頻繁には来れなくても、出来る限り顔は出したいです。
次回は一泊かな(笑)

2016年06月08日

御召作り『Kilim』 その1

仙福屋が作る着物で、夏単衣という季節を絞って制作しているモノがあります。柄的に色々と制約があって、なかなか新しいモノづくりが難航していました。『それよりも、もう一方の方を・・・。』と自分から避けていたこともあります(苦笑)が、今の時期やはり、人気が出て、毎年毎年、その人気も少しずつではありますが、右肩上がりです。

そうすると、もう一方を・・・とも言ってる訳にはいきません。案もあるし・・・。やるか・・・。
と決して嫌ではないのです(笑)が、とうとうスタートしました。

現状のシリーズにもある『Kilim(キリム)』の帯図案を活かしてのモノづくりです。

元々のKilimは織組織は『総紗縫』が中心。配色も非常に綺麗な色が多く、個性的な帯が揃っています。→PINTREST参照

それを元に作りますが、色にイメージが引っ張られないよう、頭の中はこんな風に白黒に。

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ここから着物としての柄のサイズ、意匠の方向、織りの見せ方等々を検討していきます。基本的に帯と着物の柄とは違いますので、この段階で良いと思っていたものの多くは弾かれ、再度織物として織れるのか?どこをデフォルメするか、そこを詰めて、進めます。

今日はまだ最初の段階。仕上がりはまだ先ですが、いいものができそうですよ。
一度、進めだすと、楽しくなりますが、それまでは非常にハードルの高いモノづくりです(苦笑)。

2016年06月03日

人気になりつつある、総紗縫の縞。

最近人気の『総紗縫の縞』。
昨日、FB上に着姿をUPしていましたが、写真でもやっぱり皆さんから良い評判を頂いています。

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FB(6月2日)

帯の製織からすると、通常(西陣の場合)経糸は一色の無地(下記写真の様に)が多いです。

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柄や色は緯糸(横糸)で織り成します。
例外的に、となみでも1200経錦(リンク)や二重織がありますが、だいたい西陣はそんな感じです。
だから、一つの経糸で沢山の柄を織ることができます。反対に縞柄の場合、経糸の段階で色糸を縞になる様に並べて作ります。
そのため、一つの経糸からは基本的に一つの縞柄しか織れず、その経糸が機に掛かっている時は、基本的にそれを織り続けることになります。

総紗縫の場合、またもう一つ山があります。それは製織段階で総紗縫独自の繊細なバランスを考える必要があります(細かさや糸同士の綟りなど)。そのため、少しのバランスが崩れるとキズになりやすく、そのほとんどが致命的なモノで、商品にはなりません。経糸を縞にすると、そのバランスがホンの僅かにくるってしまうので、織る段階でまた問題を抱えてしまうことになります。そういうこともあり(そこまでしても、あまり注目されていない縞柄は避ける傾向に)、柄数は増えていませんでした。

ただ、最近は総紗縫2本目、もしくは三本目を持とうと言って下さる方が増えてきてきました。その時『次は雰囲気の変わったモノを・・・。』と言われ、ほそぼそと作っていた(笑)縞に注目が集まっています。

いつもよりも気を払わなくてはいけない、総紗縫の縞。周りの雰囲気で新しい柄も起こされようとしていますので、自分ももう一度触れようかな・・・。それとも『5年後の総紗縫』のモノづくりとお題を立てて、違う表現方法で、新しい魅力を探そうかなぁ、と考えています。

2016年06月02日

今日は伝える仕事の打ち合わせ。

午前中は広告のデザイン、打ち合わせがメインの一日でした。

『帯づくり』の時は、今まで蓄積したモノに、その時のひらめきみたいなモノを掛け合わせ、反応を起こして(もしくは期待して)、形にしていく仕事です。

今日の打ち合わせは、そうやって作ったモノをもう一度見直す。(自分の中にあるものを無理やり、ほじくり返すの方が近いかも?)そんな仕事です。帯を目の前で作っている時は、それが精一杯ですが、ちょっと時間を置いて、しかも何人かで出来上がったモノを囲みながらの打ち合わせです。そうなると、たとえ自分のモノづくりであっても、『これは本当に良い帯だぁ。』というちょっとした思い込みは、横に置いておいて、結構冷静に帯を見ることができます。

この広告の対象にならないと、なかなか冷静に振り返る機会は多くありませんから、大事ですし、次かその次のモノづくりに必ず繋がります。その意味で、大きな括りの中のモノづくりかもしれません。

ちなみに、出来上がったモノが、よくできている帯の場合は、しゃべりたくて(振り返りたくて仕方がない 笑)となりますが、そうじゃないもの、例えば、自分のイメージと違ったモノが仕上がる(しかも人気があったりすると余計、イヤかも・・・苦笑)か、そこまで好きじゃない(自社と言えども自分のモノづくり以外になると、稀にあります。ダメですけどね。)に関しては、帯と冷静に向かい合い、それについて真剣に語るということは、形式的にできたとしても、相手にちゃんと伝えるとなると、なかなか難しいです。

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(打ち合わせ中・・・、まだ柄等は未定です)

もちろん、今日はそんなことはなく、対象となる帯がとても好きで、しゃべりたいスタッフがいましたので、充実した打ち合わせになりました(笑)

そんな今回は第一回目なので、その帯の作り方、思い、他との違い、ウリ、手間、用途、今後どうなるか、どうしていきたいのか?等々の事情を聴取してもらって、考えつく限りの材料を出しきって、方向性を見つける、そこまでです。結構な時間を取っても、それらはほとんど直接は誌面に出ないことなのですが、こういうことを繰り返すことで、最終のデザインや雰囲気に活かされて、皆さんに少しでもイイ形で伝わるように、とおもっています。

まだまだ、形はおぼろげですので、あれやこれや、いろんな可能性を考えています。自分たちは帯を作るのは得意かもしれませんが、それを100%に近づけて伝えるというのは、下手くそ(しかも相当 苦笑)です。帯づくりも同じ、伝える仕事も沢山の方の力をお借りしてます。

本当に感謝感謝です。

2016年06月01日

左うちわ/輪宝文袋帯

本社向かいショールームの入り口には、きのう唐長さんより届けていただいた『輪宝文/左うちわ』を飾っています。

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この輪宝文は唐長さんが所蔵される650柄もの中で、最も吉祥文が集った最高に縁起の良い文様です。
また、さらに11代目奥様好みの柄でもありますし、南蛮七宝文様に近い思い入れがある意匠になってきました。

この輪宝文で帯を制作する何度も修学院へお邪魔させて頂いていましたが、その時もこの左うちわの話は何度か伺っていました。特に奥様の郁子さんが言われて印象的だったのは・・・

『このうちわを左手に持ってあおぐと風が幸せを呼ぶの。』

それが頭に残っていますので、ショールーム入り口に置き、そこから幸せを呼ぶ風が入ってくるようにしています。確かに、じっとこのうちわを見ていると・・・。眺めているだけでも、そんな気持ちになってきます(笑)。

そして、この『左うちわ』の向かい側には、うちわの唐紙を元に製織した『輪宝文』の袋帯を置き、

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入り口から入ってこられた方をこの2つで挟み込む様にしています。

相乗効果でさらに幸せを感じることのできるかな?もし、京都に来られる際には、ぜひ『うちわと帯』に挟まれて幸せを感じて頂きたいです(笑)

他にも、近々郁子さんの本も届きますので、しばらく唐長三昧になりそうです。

2016年05月28日

帯地の使い方。シンプル数寄屋袋。

今日は5月第4土曜。会社は営業日です。最近は営業スタッフは出張が多くなり(本当にご苦労さまです)、曜日感覚が薄くなっていますが、京都でのモノづくりは、一応土曜日ストップします。その間に、やらなくては〜!と溜りに溜まっていることを進めて、少しでも来週に向けて軽くなるように頑張る日です(笑)。

そうは言いながら、じゃ、今日は一日落ち着いて仕事ができたか?というと全くそんなことはなくて(苦笑)、結局はバタバタ終わってしまいました。落ち着いた時間といえば、一ヶ月ほど前に、依頼を頂いた小物が上がってきてたので、それをショールームで見ていた時くらいかなぁ・・・。

ちなみに、この数寄屋袋作りも、今進めていることの一環の一つ。それは、帯のモノづくりではなくて、帯を使ってのモノづくり。今までも制作していましたが、今回のモノは縫製、形状を見直し、簡単にシンプルにしました。

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【数寄屋袋/プチ仙福屋】

仕様を見なおしたのは、なぜか?

皆さんから、色々ご意見を頂きました。『もう少しカジュアルに持ちたい。』『プレゼント用に・・・。』それに加えて、できるだけ帯を日常に加えれるように。使う用途、使い方、コスト面も含めて色々と検討していきます。

今まで通りのモノも作りまし、どちらかと言うと、帯地の裏糸の処理等を考えると、この辺りも上手く住み分けはできそうです。今週もなんやかんやと、やっているうちにもう終わってしまいました。来週も手帳を見ているだけで盛り沢山です。

2016年05月24日

雀形七宝、初披露

先日FB上でとても評判が良かった名古屋帯『唐長文様/雀形七宝』。社内で着物に合わせて色々とイメージを膨らませていましたが、やはり実際に身体に帯を巻いてもらうのが、一番です。

合わせるモノは、『南蛮七宝文様/夏・藍大島紬』。これもまた最近上がってきた、面白い曰くつきの着物(苦笑)。

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『南蛮七宝文様/夏・藍大島紬 ✕ 雀形七宝(名古屋帯)』(七宝の中に雀が・・・)

名古屋帯は袋帯と違い、裏地を必要としない分、コスト的には下げれますから、柄や色を思い切って遊ぶことが(袋でもやってましたが・・・ 笑)し易い形態です。となみの生産数量からすると、名古屋帯はほんの僅かしかなく、織る際は筬の巾が違う(八寸二分or九寸)ので、今ある全ての織組織ですぐに、袋帯→名古屋へと移行できるわけではありませんし、袋帯の裏地も含めた世界観もとっても楽しいモノづくりです。

ただ、こんな感じの名古屋帯の世界をもっと広げることで、ここから『となみ帯/織物』に触れて頂ける機会が大幅に増えるのかな?と、この帯の評判を見たり聞いたり、実際に目にすると、そう思いました。数柄待機していますので、少しずつ進めていきますね。

2016年05月18日

織物の色について・・・。

 

織物は、経と緯の糸だけで柄を織り成しますが、多くの種類の織組織があり、その違いで同じ色を使っていても、発色は変わります。経が主に織物の表面に出る、または緯糸が・・・、の違いでも発色は全く異なってきます。また糸を筬で打つ密度(打ち込み)によっても、変わってきます。

自分たちが行う主たるモノづくりは、図案を見ながらの意匠図作りです。帯づくりの要素は、色・柄・組織。
その主な部分がこの意匠図づくりで、決まっていきます。ですので、この後の工程・意匠図を見ながらの『配色』段階では、多少の修正はできても、意匠図の後悔や失敗はなかなか取り戻すことは難しいです。

 

まあ大成功の部類に入るくらい上手く行っても、出来上がってから『こうしてればよかった〜。う~ん。』ということはいつもですが・・・(笑)

 

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参照:意匠図/百人一首(FB記事へ

 

たとえば、現在シリーズを作らせてもらっている『CandyCircus』の帯。
元となる作品の色はそのままを織物で出すのは、ほぼ不可能なので沢山の色を意匠図段階で混ぜに混ぜ、作り出しています。遠くで見るとそう感じなくても、近くによると、目で見える色とは少し違う色が重なり合って、一つの色を作り出していることが良くわかります。

 

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この帯を作る際には、今までやって来なかったことを試していて(輪郭にもなっている、黒緯部分)それがこの帯の特長にもなっています。この帯は8月に発表予定で、まだ実際の評判をそこまでは聞いていませんが、細部がどうのよりも全体の帯に漂う雰囲気に今まで異なる感じを受けられる方がおられます。

 

色を作ろうと考えてやったことが、全体の雰囲気も左右していく。まずの第一印象は、色に目が行くと思いますし、織組織的なモノづくりとともに、その辺りも意識して自分自身がハマっていきたいところです。
 

 

 

昨日は色について考えさせられるモノを見続けることができましたでの、今日改めて意匠図と織り上がりの帯を見ながら、後悔じゃない、前向きな反省をしています。この辺りがモノづくりの楽しいところですね。ホントに。

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