となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > 2016年6月

2016年06月30日

2016'6 奄美研修。

ブログは久々の更新です。その間、毎年恒例になりつつある奄美研修へ行ってきました。今回は、初奄美のスタッフも一緒に行きました。彼は、それなり勉強もして基本知識は十分にあり、商品としての大島紬に関しては、これ以上ないくらい扱ってきたスタッフです。

その彼が、実際に現地で、自分の目で見て、奄美の空気を感じて、モノづくりを体感しました。知識がある分、今まで点であった様な内容が一つずつ頭の中でくっついて、線になり、それが広がって、またくっついて面になる。そんな感じを受けて来たようです。

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また、この研修で訪れる場所は、休眠しているわけでもなく、実際に現役でバリバリと使われている工房、泥田に直接行って体験を行います。

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そこにバリバリの職人さんもおられますので、貴重な時間を割いてもらい、作業を見せてもらったり、自分でもやってみる。しかも、工房内でピリピリの緊張感の中で・・・。勉強にならないはずはありません。

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現地の方の話によると、全く普段は使っていない泥田にそのときだけ職人を呼んできて、モノづくりをここでしている様に見せかけることもあり、それを取材や撮影等で使うこともあるそうです。こういう話を聞くと、テレビや雑誌などを通して見られた方が、本物はこんなものか・・・。と思われるのではないと、本当に残念です。

唐長さんの時も書いていましたが、簡単に本物が失われてしまう時代です。その流れが一度出来てしまうと、逆らうのはとても難しいことですので、自分たちはできるだけ早めに、本物をちゃんと伝える。ということをやっていきたいと思います。

研修は奄美だけでなく、自分たちの本拠地西陣、その他の産地も行っていますので、絶やさず継続して、本物を伝える努力をしていきたいです。どの産地へ行ってもそうですが、毎回そう思います。

2016年06月23日

6月の追い込み 着物制作。

日曜日から奄美へ三日間行きますので、6月最終週の来週京都にいる日は、2日間・・・。
あまり時間がありませんので、今月中に上げていきたいモノ、次の工程に渡しておきたいものの仕上げに掛かっています。

今週初めの段階では、今月中にやらなければいけないことは、ギリギリ間に合いそう。でしたが、大変押しています(例えば、昨日だけでも二時間ほどで終わる予定の仕事が午後全部使ったり(笑うしかないです。 笑)とっても厳しい事態です(苦笑)。

それもモノづくりが壁にぶつかり悩むのではなくて、盛り上がり過ぎているためで、まあ仕方がないかな(押しているのは、なんとかします 笑)。特に若手が中心のモノづくりなので、その空気を大事に、勢いまでその中に組み込んでいければ、面白い仕上がりになりそうです。

具体的に、一つのモノづくりは、新しいコラボの立ち上げ。

一年以上モノづくりの摺り合わせ、特にベースとなる方向性の打ち合わせに時間を掛けています。
それがやっと、三柄だけですが、図⇒型が完成、素材となる生地も決まりましたので、目に見えて進みました。

そして、もう一つは秋用の御召の打ち合わせ。特に新柄出し、です。
となみ織物で作る着物の中の柱です。今までは主に私がやっていた所に、ちょっと新しい空気を入れてみます。

以前も若手との帯つくりのところで書いていたと思いますが、とにかく口を出さない。目でもモノを言わない。後からも何も言わない(笑)、仕上がりとお客さんからの感想ぐらいは聞く。

それを強く強く意識して、同行しています。大変難しいですが・・・(笑)。

たまに違うなぁと思うときは、この感じが良いんじゃないか?
という反物を気づくように流してみたり・・・(笑)。

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『仙福屋の御召/輪宝文』
  ←こんな織物の上げ方が良いのになぁと無言で横に置くとか・・・笑

まだまだ、言いたくなるので、ダメですね〜(苦笑)。

2016年06月21日

特別にならない着物づくり

綿薩摩白生地の上に、南蛮七宝の型を置いて染めた反物を私用の着物として、仕立てに出しました。

ここ最近そういえば、私自身が着物を着る回数は、残念ながら減っています。『今日は(着物かスーツの)どっちにしよう?』と2択で考えてしまう時点で、やはり着る回数が減るように思います。まずは自分から意識を変えて『無意識のうちに着物へ手が伸びる』ぐらいには持って行きたいです(笑)。

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昨日は、そのための着物を仕立てに出しました。

(すぐには難しいかもしれませんが)『着るのが大変な時でも、無理をして着て行きたい。』あまり難しく考えず、まずは①着心地が良いモノ、②楽なもの、③価格的にもこなれているもの(綿薩摩では③は厳しいですが)。が揃えば、上手く行きそうです。

生地が夏物でなくても、綿薩摩の場合、その下の襦袢には洗えるサラサラの南蛮七宝を着るだけで、
なんとか夏も越せそうな気もしますが、どうでしょうね?

そんなバージョンの帯も順次、考えていきます。

2016年06月20日

秋に向けて仕込み中。となみブルー御召

まだまだホントの仕込みですが、新しい色を試しています。
と言っても、横に通す糸を通すだけで色が変わりますし、今まで使っていない色を使えば、新色の反物が上がってきます。横糸を変える自体は、そこまでの手間ではありません。となると、新しい色を試す、ということはそんなに大したことが無い。と思われそうです。

が、今回の『新しい色を試す』というのは、経糸を変更しての新色作りです。経糸というのは織物を一本織る度に変えるのではなくて、場合によっては何十本モノ織物を一つの経糸、一種類のモノで織り上げます。

そのため、失敗すると、何十本織れるはずの経糸が全て無駄になってしまい、最悪の場合は最後まで織り切らず、途中で切断となります。そのため、今まで安定的に織れていたモノから経糸変更することは、そこそこ大きなチャレンジです。(だから、少なからず『問題ないのに、なんで?』そんな声も聞かれます)

今回の目的は、単純に『新しい色を作る』ことにもありますが、その色は『となみブルー』を表現したいと考えています。となみブルーで織る御召つくりです。今のところは試織で柄も試験です。

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(となみブルーの御召)

まだ完成していませんが、もちろん経糸を変えず、緯糸(横糸)だけでも、これに近い色をつくることもしてみました。ただ、その時は経糸の色が邪魔をして、濁ってしまう。悪くない色でもあったのですが、まだ途中段階のこのブルーの方が遥かに透明感があり、となみブルーに近い色をしています。

この目出しサイズで見ていると、よく見えても、これが『反物になると、どうなのか?』。そこから修正が必要か・・・、などなど、まだ完成までは遠いですが、秋に向けてこのモノづくりは視界良好です。楽しみにしていていください。

2016年06月17日

巡り合わせ良く・・・。CandyCircusのきもの1

CandyCircus』、今度は着物。
と言っても、季節的にまずは、ちりよけが一反完成しました。

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まず舟田さんに怒られること覚悟して(笑 大丈夫でしたが)、作品を切りばみ状態に。実際の作品ではなくて作品の写しを切って、パズルのように、また図案として成立するように貼り直します。

その出来上がった下絵を舟田さんに数度打ち合わせをしつつ、修正を掛け図案に。そこから型を作り、反物に染め上げていきます。

この様に工程を一言で書いてしまうと、簡単に見えてしましますが、このCandyCircusシリーズはできる限り、完成したモノから、作る大変さよりも、出来上がったモノから楽しさやワクワクを感じて頂きたい、そんなモノづくりを心がけて行こうと思っていますので、大変さの部分は今回カットしておきます。それはまた帯の時に(笑)。

今回、幸運だったのはこの図に応じた白生地が抜群に良かったこと。

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普段はあまり意識が行かないかもしれない白生地ですが、今回はこの生地のお陰で意匠の陰影、奥行き感、流れや勢いまで、上手く乗せてくれました。

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非常に個性的な作品を元に作らせてもらった、塵除けです。ここまで来るまでにも、何度も着姿の確認を・・・と、書くと苦労話になるので、今回はここまで(笑)。

ホントにいい出来栄えで、安心しています。

ちなみに発表は、今まで制作した帯も含めて8月を予定しています。
どんな反応を皆さんから頂けるのか、ちょっと怖いですが、楽しみにしています。

この後は、3柄目帯のお腹部分を作り始めていますので、これもまた8月に間に合うように頑張ります〜。

2016年06月16日

上品綟と総紗縫

ここ数日特によく触れるのが『上品綟』。織物の的には綟り織の一つ、夏の代名詞『紗』の一つです。

となみではこの上品綟の他に、総紗縫という紗の一種がありますが、こちらは改良しすぎと言っていいぐらい徹底して、作り込んでいます。そのため、よく言われるのは『えっ、この帯、紗?』と。そんな風に仲間とは思って頂けないことが多いのです。それに比べて、上品綟もとなみ独自の改良を加えていますので、世間の紗よりも、遥かに豊か表現力を持ってはいますが、まだ『紗』の原型が残ります。

ですので、この上品綟が完成した当時は、となみ織物モノづくりのベテランにとって、長く織っている総紗縫よりも、まだ日の浅い上品綟の方が目新しさを感じていました。そうは言っても、世間は『紗』が残る上品綟よりも、原型がほぼない総紗縫に新しさを感じる。この2つのギャップは最初のモノづくりでは、非常に難しい問題でした。(例えば、総紗縫は無地に近いものでも、お客さんの反応は、お~凄い。となるのに対して、上品綟の場合は、かなり凝ったものでも、お客さんからは、どこかで見たことあるかも・・・。と言われてしまったりしたことも。)

そこから様々な情報を加味し、モノづくりを濃く絞ることで、上品綟自体の良さ、らしさ、織物としての特性を掴み出すことができました。それから、上手く回りはじめ、最近の強みが目立つ織物に進化したような気がします。作り手からしても、実際には『この織物でしか出来ないこと』、当然なんですが、それがちゃんとしていないと、モノづくりしていても楽しくありませんし、続きません。

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『右も左も織物は上品綟』

先日の撮影会はそんな空気もでき始めたのか、総紗縫よりも多くの上品綟を撮すことができました。こうなると、今度は総紗縫!と、また総紗縫モノづくりも盛り上がっていきそうです。

ありがたい事に進めたいこと一杯です〜。

2016年06月14日

撮影会

用途色々で着物の撮影を行いました(自分も含む。笑 それはまた別の話で・・・)。
少し前から撮影の日を決めていて、その基準としては、梅雨に入ってもまだ本格的なじゃないはず(笑)の頃。そんな感じでしたので、前の日から当日の午前中は雨が降っても、昼からは止んで、空気も澄んでちょうどいい頃合い。という狙い通りの撮影日でした。

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私は、撮られる方の役回りもありましたので、着物を着たまま、撮ることもし、バタバタながらも、この時期にあったいい写真が撮れたと思います。

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『上品綟/袋帯、総紗縫/日傘』


メーカーとしては、帯、着物単体を出来上がった際に、見ることが一番多いです。そのため、帯・着物・小物等々、その方の意思でコーディネートされた姿を見るのは、その機会が増えたと言っても未だに幸せです。特に、カメラだと通りすがりパッと見るわけでも無く、ファインダー越しに一つ一つ真剣に凝視することができるので、またいつもとも違った感覚で、自分たちのモノづくりを確かめることができて、本当に良かったです。

たまにはこういう時間を作るのも、モノづくりには大事ですね。

2016年06月13日

こだわりを浴びてきました。

先日は電車に片道5時間少々揺られて、モノづくりの打ち合わせへ行ってきました。
次の午前早めに打ち合わせがあったので、(泊まりたかったけど)日帰り。

5時間✕2は少々堪えます。年?(苦笑)

今回お邪魔したお店とのお付き合いが始まって、まだ数年。と比較的短いのですが、ここのモノづくりへのコダワリと姿勢は半端無く、うちのモノづくりへの共感も含めて、今後も一緒にモノづくりしていきたい、と感じさせられる、数少ないメーカーです。今回のモノづくりも、となみ色が全面に入りますので、0から摺り合わせを繰り返し繰り返しして、進めていくことになります。

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ちなみに、今回は【伊藤若冲の世界】と【神坂雪佳の世界】の着物作り。
若冲の場合、今年の生誕300年には間に合わない可能性も高いのですが、こことのモノづくりの性質上仕方がない(苦笑)、と割り切っています。

本来、帯屋である、となみ織物が着物を作るようになったのは、自社帯が活きる着物を作るため、でした。それが最近は、着物でも、となみらしいコダワリを作り出す。そこに強く意識が無くようになってきましたので、おそらく今後もこことのモノづくりは強くなっていくと思います。

頻繁には来れなくても、出来る限り顔は出したいです。
次回は一泊かな(笑)

2016年06月08日

御召作り『Kilim』 その1

仙福屋が作る着物で、夏単衣という季節を絞って制作しているモノがあります。柄的に色々と制約があって、なかなか新しいモノづくりが難航していました。『それよりも、もう一方の方を・・・。』と自分から避けていたこともあります(苦笑)が、今の時期やはり、人気が出て、毎年毎年、その人気も少しずつではありますが、右肩上がりです。

そうすると、もう一方を・・・とも言ってる訳にはいきません。案もあるし・・・。やるか・・・。
と決して嫌ではないのです(笑)が、とうとうスタートしました。

現状のシリーズにもある『Kilim(キリム)』の帯図案を活かしてのモノづくりです。

元々のKilimは織組織は『総紗縫』が中心。配色も非常に綺麗な色が多く、個性的な帯が揃っています。→PINTREST参照

それを元に作りますが、色にイメージが引っ張られないよう、頭の中はこんな風に白黒に。

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ここから着物としての柄のサイズ、意匠の方向、織りの見せ方等々を検討していきます。基本的に帯と着物の柄とは違いますので、この段階で良いと思っていたものの多くは弾かれ、再度織物として織れるのか?どこをデフォルメするか、そこを詰めて、進めます。

今日はまだ最初の段階。仕上がりはまだ先ですが、いいものができそうですよ。
一度、進めだすと、楽しくなりますが、それまでは非常にハードルの高いモノづくりです(苦笑)。

2016年06月07日

第一段階通過中/Candy Circus3

完成まで遠いので、まだ全体のUPは遠慮させてもらいます(楽しみはもう少し先に・・・ 笑)。紋作り(意匠図づくり)に『もう大変やわ。』と何回言ったか分からない(苦笑)、苦労した柄です。なんとかまず形になったのが、嬉しくて一部ですがUPしてみます。

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『Candy Circus3』

織物は、自分がよく使うお馴染みの『紹巴織』。となみの中でも細密さと色の発色が綺麗。表現力も抜群。図案から帯にする際、イメージし易い。十何年ずっと毎日の様に作ってきましたので、性も合って、好きな織組織です。

(昔から)『この織物は凄い完成度やけど、もうこれ以上(新しいモノを作るのは)無理じゃない?』と言われ続けてきましたが(多分初めて、それを聞いた時から10年は経ってます 笑)、今でも毎年新しい手法・技法を作っては、既存のモノとくっつけて、新しいモノづくりにしています。

今回の意匠(後日織物で紹介しますね)を紹巴織で織った理由は、特長と同じで、発色や多様な色を作れること、緻密さ(何回も繰り返すほど、凄いレベルのことが出来ます)、本当に武器です。これらを他の織物で似せようと、と思っても、その差は大きいです。

今回はその武器に振り回されました。糸同士を混ぜ、沢山の中間色を作ろうとしたため、収集が付かなくなり、時間ばかり掛かる。元々の意匠の色数を忠実に作ろうと、頭の中でこねくり回して、紙の上で試行錯誤の繰り返しでした。

まあ、どれだけ時間を掛けて万全を期して挑んでも、第一回目の試験織を見るまでは、失敗することは大いにあります。今回は、最大限力を尽くして、それ以上はどうしようもないので、後は待つ。そういう心境でのモノづくりでした。だから、試織が上がってきて、まずはホッとしています。

さらに思ったよりも、色が濁らず、修正は必要にしても、『あ・・・。ヤバイ・・・。』ともなりませんでした。心は折れず(苦笑)、明日早速修正だ、と思えましたので、この帯の完成は意外に早いかもしれません。

とは言っても、形になり始めたのは、まずお太鼓だけですが・・・(笑)

2016年06月04日

ちょっと特別なもの。洗える襦袢、限定数のみ

ある出張先で・・・。
『この色で作れませんか?』と言われて制作した『襦袢』があります。

その時のやり取りとしては・・・。

最初は、基本的に『一反では染めれませんので(染料の無駄等でコスト上がりすぎる)難しいと思いますよ。』とお断りに近い返事させてもらいました。そうすると、その返事として『最小の単位は何反ですか?』と、『染料と生地の都合で・・・。これくらいだったら・・・。』、『難しいかもしれないけど、周りに当たってみます。代わりにこのロット限りの配色にして欲しいです。』という様なやりとりを何度か、させてもらっているうちに、できそうな気になり、その後はモノづくりしたい気持ちになりました。

結果は、最小限制作するのに必要な人数も集めてこられ、作り始めることができました。少し前の話です。

今日は、その一反目が入ってきました。まだ、2反目〜と染めていきますし、全部揃うまでには、もう少し時間がかかります。

また、数人の方が誘い合わせの上での注文ですし、全部が揃わないと『私のまだ?』となることから、急かしつつ、最短で同じ様なタイミンで納められるようにと考えています。

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『捻たグリーンに紺のようなグレーの南蛮七宝文様/洗える襦袢S』

その時の約束通り、この色はこのロットで終了ですので、ある意味、とても贅沢。注文された方からすると、とても満足して頂けるモノになったと思います。モノ自体も本当にいい色に染まってきました。

2016年06月03日

人気になりつつある、総紗縫の縞。

最近人気の『総紗縫の縞』。
昨日、FB上に着姿をUPしていましたが、写真でもやっぱり皆さんから良い評判を頂いています。

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FB(6月2日)

帯の製織からすると、通常(西陣の場合)経糸は一色の無地(下記写真の様に)が多いです。

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柄や色は緯糸(横糸)で織り成します。
例外的に、となみでも1200経錦(リンク)や二重織がありますが、だいたい西陣はそんな感じです。
だから、一つの経糸で沢山の柄を織ることができます。反対に縞柄の場合、経糸の段階で色糸を縞になる様に並べて作ります。
そのため、一つの経糸からは基本的に一つの縞柄しか織れず、その経糸が機に掛かっている時は、基本的にそれを織り続けることになります。

総紗縫の場合、またもう一つ山があります。それは製織段階で総紗縫独自の繊細なバランスを考える必要があります(細かさや糸同士の綟りなど)。そのため、少しのバランスが崩れるとキズになりやすく、そのほとんどが致命的なモノで、商品にはなりません。経糸を縞にすると、そのバランスがホンの僅かにくるってしまうので、織る段階でまた問題を抱えてしまうことになります。そういうこともあり(そこまでしても、あまり注目されていない縞柄は避ける傾向に)、柄数は増えていませんでした。

ただ、最近は総紗縫2本目、もしくは三本目を持とうと言って下さる方が増えてきてきました。その時『次は雰囲気の変わったモノを・・・。』と言われ、ほそぼそと作っていた(笑)縞に注目が集まっています。

いつもよりも気を払わなくてはいけない、総紗縫の縞。周りの雰囲気で新しい柄も起こされようとしていますので、自分ももう一度触れようかな・・・。それとも『5年後の総紗縫』のモノづくりとお題を立てて、違う表現方法で、新しい魅力を探そうかなぁ、と考えています。

2016年06月02日

今日は伝える仕事の打ち合わせ。

午前中は広告のデザイン、打ち合わせがメインの一日でした。

『帯づくり』の時は、今まで蓄積したモノに、その時のひらめきみたいなモノを掛け合わせ、反応を起こして(もしくは期待して)、形にしていく仕事です。

今日の打ち合わせは、そうやって作ったモノをもう一度見直す。(自分の中にあるものを無理やり、ほじくり返すの方が近いかも?)そんな仕事です。帯を目の前で作っている時は、それが精一杯ですが、ちょっと時間を置いて、しかも何人かで出来上がったモノを囲みながらの打ち合わせです。そうなると、たとえ自分のモノづくりであっても、『これは本当に良い帯だぁ。』というちょっとした思い込みは、横に置いておいて、結構冷静に帯を見ることができます。

この広告の対象にならないと、なかなか冷静に振り返る機会は多くありませんから、大事ですし、次かその次のモノづくりに必ず繋がります。その意味で、大きな括りの中のモノづくりかもしれません。

ちなみに、出来上がったモノが、よくできている帯の場合は、しゃべりたくて(振り返りたくて仕方がない 笑)となりますが、そうじゃないもの、例えば、自分のイメージと違ったモノが仕上がる(しかも人気があったりすると余計、イヤかも・・・苦笑)か、そこまで好きじゃない(自社と言えども自分のモノづくり以外になると、稀にあります。ダメですけどね。)に関しては、帯と冷静に向かい合い、それについて真剣に語るということは、形式的にできたとしても、相手にちゃんと伝えるとなると、なかなか難しいです。

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(打ち合わせ中・・・、まだ柄等は未定です)

もちろん、今日はそんなことはなく、対象となる帯がとても好きで、しゃべりたいスタッフがいましたので、充実した打ち合わせになりました(笑)

そんな今回は第一回目なので、その帯の作り方、思い、他との違い、ウリ、手間、用途、今後どうなるか、どうしていきたいのか?等々の事情を聴取してもらって、考えつく限りの材料を出しきって、方向性を見つける、そこまでです。結構な時間を取っても、それらはほとんど直接は誌面に出ないことなのですが、こういうことを繰り返すことで、最終のデザインや雰囲気に活かされて、皆さんに少しでもイイ形で伝わるように、とおもっています。

まだまだ、形はおぼろげですので、あれやこれや、いろんな可能性を考えています。自分たちは帯を作るのは得意かもしれませんが、それを100%に近づけて伝えるというのは、下手くそ(しかも相当 苦笑)です。帯づくりも同じ、伝える仕事も沢山の方の力をお借りしてます。

本当に感謝感謝です。

2016年06月01日

左うちわ/輪宝文袋帯

本社向かいショールームの入り口には、きのう唐長さんより届けていただいた『輪宝文/左うちわ』を飾っています。

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この輪宝文は唐長さんが所蔵される650柄もの中で、最も吉祥文が集った最高に縁起の良い文様です。
また、さらに11代目奥様好みの柄でもありますし、南蛮七宝文様に近い思い入れがある意匠になってきました。

この輪宝文で帯を制作する何度も修学院へお邪魔させて頂いていましたが、その時もこの左うちわの話は何度か伺っていました。特に奥様の郁子さんが言われて印象的だったのは・・・

『このうちわを左手に持ってあおぐと風が幸せを呼ぶの。』

それが頭に残っていますので、ショールーム入り口に置き、そこから幸せを呼ぶ風が入ってくるようにしています。確かに、じっとこのうちわを見ていると・・・。眺めているだけでも、そんな気持ちになってきます(笑)。

そして、この『左うちわ』の向かい側には、うちわの唐紙を元に製織した『輪宝文』の袋帯を置き、

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入り口から入ってこられた方をこの2つで挟み込む様にしています。

相乗効果でさらに幸せを感じることのできるかな?もし、京都に来られる際には、ぜひ『うちわと帯』に挟まれて幸せを感じて頂きたいです(笑)

他にも、近々郁子さんの本も届きますので、しばらく唐長三昧になりそうです。

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