繊細で大胆、優雅でいて厳か。ここには人を魅了する全てがある。
類い希なる写実性を備えた人形に、喜びや悲しみなど豊かな情感を刻み込んだ平田郷陽の衣装人形
女性をモデルとした色香漂う作品、無垢な表情を浮かべる童人形、そのどれもが私たちの心に感動を呼び起こさせる力を持っています。
それは作品を通して触れることのできる郷陽の精神性、そして研ぎ澄まされた美意識。
「人間国宝 平田郷陽の世界」では、今なお多くの人の心を魅了する郷陽の世界を帯に紡ぎ、洗練された気品と深いぬくもりを堪能していただけます。
木彫や木粉練物でつくった胴体に布製の衣装を着付けする衣装人形は昭和初期に花開き、更なる美しさと芸術性を身に纏うことになりました。
人形が着る衣装は時代の風情を伝えるだけでなく、郷陽の研ぎ澄まされた感性を感じることができますそれは衣装だけでなく、顔や髪、小道具など細部に至るまで匠の想いが息づいています。
この格調高い芸術をとなみ伝承の技によって帯の上に鮮やかに蘇らせます。

平田郷陽は、人形作家である初代郷陽の長男として生まれ、小学校を卒業すると同時に父のもとで厳しい修行を積みます。そして、すぐにその類い希なる才能を発揮し、それまで単なる見せ物とされていた「生き人形」を卓越した技術と感性で発展させ、やがて芸術性豊かな衣装人形を完成させました。
郷陽の作品は帝展をはじめ文展や日展に入選し、五十二の時に人形界で最初の人間国宝に認定されました。その後も作品の幅を広げつづけ、それらの優れた作品は今なお多くの人に愛されています。
 


沢辺の雪

平田郷陽

略年譜
1903年  初代郷陽の長男として、東京浅草に生まれる。
1916年  小学校卒業、父のもと人形づくりの修行に入る。 
1924年  父没。二代目郷陽を襲名。
1928年  人形研究団体白沢会を創立。
1936年  第一回帝国美術院展に初入選。
1937年  パリ万国博覧会に出品し、金賞受賞。
1941年  日本人形社を解散し、人形美術院を創立。
1948年  日本人形作家協会が創立、代表委員に就任。
1950年  第六回日展で特選となる。
1953年  北斗賞受賞。無形文化財に選定。
1955年  重要無形文化財人形部門の認定保持者。
1959年  皇后宮殿に「瑞鳥」制作。
1968年  紫綬褒章を受章。
1974年  勲四等旭日小授章を受章。
1975年  日本工芸会理事、人形部会長、
       日本伝統工芸展監査委員、陽門会主催。
1981年  逝去。


香り


口紅